2007年プロジェクト

【バングラデシュ・サイクロン被災者支援 ボラ県における緊急支援物資配布事業
 /初動調査】

バングラデシュ南部沿岸地帯を本年11月15日に襲ったサイクロン「シドル」は、同国南部沿岸地帯と南部内陸部に甚大な被害を及ぼしました。これまでのバングラデシュ政府発表によれば、全国64県中、半数近い31県が被害を受けました。中でも沿岸部と内陸部の13県が特に大きな被害を受けました。

このサイクロンによる被災者は約190万世帯の約900万人、家屋への被害も大きく、全国で約150万軒以上が全半壊した。さらに、農耕地の被災は90万ヘクタール以上に上り、家畜への被害も約170万頭と、ここ数十年で最大の被害をもたらしています。

こうした中、バングラデシュ政府及び国連機関を中心とした緊急支援がいち早く開始されましたが、被災が甚大なため、交通網などのインフラが破壊され緊急支援活動に支障をきたしているという情報もあります。このため、支援の届かないポケットも発生していることが指摘されており、フォローが必要です。

破壊された被災者の家
高波と暴風で破壊された沿岸部


初動調査開始

事態は緊急かつ大規模なものであり、サイクロン上陸後の被災者の状況は被災状況が明らかになるにつれて悪化しており、中央部の首都ダッカでもかなりの被害が出るなどバングラデシュに甚大な打撃を与えました。このため、JADEは12月21日よりスタッフを被災地入りさせ、現地状況と支援ニーズの確認及び緊急人道支援事業形成を目的とした調査を開始しました。

調査結果〜住民の状況〜

サイクロンと高波で浸食された案
サイクロンの被災者のために開かれているクリニック。医者はおらず、鎮痛剤と下痢止めがあるだけ。

ボラ島における被災者の緊急支援ニーズは、被災当初の食糧や水からシェルターや越冬用の毛布や衣類などに移行していることが分かりました。当機構は被災程度のひどい中でも特に被害が深刻なボラサドル、チョルフェション、ボラヌディンの3郡を調査し、被災状況や被災者の生活、ニーズなどを聞き取りなどから確認しました。

特に、ボラ島はサイクロン被災以前より多くの住民が波の浸食により土地を失ってホームレスとなり、脆弱性が高かったところに、2007 年のモンスーンの大雨、さらにこのサイクロンが襲来したことにより、多くの住民の生活状況は悪化しています。被災後、刻々と変化する被災者のニーズに支援が追いつかないために、多くの被災者が必要な支援を得られない危機的な状況に陥っていることが分かりました。

また、被災地各地に政府によって開設された緊急クリニックにおいては、呼吸器疾患や風邪など寒さによる病気が増えていることが確認されました。

現地では温暖化が原因の土壌侵食により土地問題が深刻で、住民は土地を奪われることを恐れて、支援の提供がある被災キャンプなどに移ろうとしません。


毛布のニーズ

現地行政(右)と打ち合わせをするJADE理事長の田中洋人(左)。毛布配布を要請された

バングラデシュ政府発表の緊急支援ニーズでは、被災地で合計35万枚の毛布が必要であると試算されています。多くの住民はサイクロンにより家を失ったため、現在も寒さをさえぎるものがなく、雨露もしのげない悲惨な避難生活を送っており、今後本格的な冬の到来とともに被災弱者は凍死の恐れもあり、生命が脅かされる危機的状況にあります。特に妊婦、体力の落ちた子供や老人、そして病人などの弱者がこれ以上体力を消耗し、生命の危機に陥らないようにするための支援が必要です。

バングラデシュ政府による支援は、被災直後の食糧支援と犠牲者の家族に対する弔意金1万タカ(日本円約1万6千円)が支給されたのみで、支援が遅れていることが本調査から判明しました。ボラ県知事からは、緊急支援の公平性を期すべく、家族の人数に関係なく1世帯につき毛布1枚を配布し、5,000世帯をカバーしてほしいと強く要請されました。

これらの調査結果を踏まえJADEは、越冬対策用の毛布配布事業を開始しました。



期間/2007年12月21日〜12月30日(10日間)
地域/バングラデシュ南部
調査人員/ 田中洋人 (神奈川県出身・JADE理事長)  他、調査アシスタント1名(バングラデシュ国籍)
予算/約100万円
連携団体/ ジャパン・プラットフォーム


※本調査にあたり、ソフトバンクモバイル株式会社様より、携帯電話を通話料込で無料で貸し出していただきました。ご支援深く感謝申し上げます。


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