2009年プロジェクト

【パキスタン南西部地震被災者支援 緊急シェルターセット配布事業(越冬支援)】

2008年11月、パキスタン・バロチスタン州において発生したM6.4の地震では、死者数166名、負傷者数は500人に上り、約17,500世帯が住まいを失いました。
冬期気温が零下8度を下回る過酷な環境下では、越冬のための備えが緊急課題となります。

ジャパン・プラットフォームの助成を受けた本事業では、簡易に設営できる緊急シェルターセット(国連が推奨するモデル仕様。竹材、トタン、プラスチックシート、鋸・金槌等の道具セット等から構成)を配布しました。それを通し、被災者たちの健康保護と疾病予防に貢献しました。

≪成果≫

@被災250世帯を対象に、国連が推奨するモデルのシェルターを配布・設営したことにより、被災者の住環境が改善されました。モニタリングの際には、健康状態が良くなったとの声が多くの人々から寄せられました。

A当機構エンジニアが技術的なアドバイスをしたり、寡婦・高齢者世帯等へのシェルター設営補助を提供したことにより、現地の厳格なイスラム・部族社会において被災者のプロテクション(特に女性と子どもの人権保護)の確保へとつながりました。

B住居を足がかりとして、牧畜や農業の再開等の生活再建への動きが始まりました。事業完了時のモニタリングの際には、すでに村内の田畑の手入れを再開した世帯も確認されました。(成果が現れるには一定の時間が必要ですが、住居が確保されたことにより人々が安心して仕事を再開できる環境が整ったといえます)


パキスタン・バロチスタン州地震被災地 パキスタン・バロチスタン州地震被災地 受益者の登録
天井が落下した家屋。伝統的な土づくりの家屋の下敷きになって多くの人が亡くなった。 JADEが提供したシェルターは余震の際の天井落下事故を防ぐため、屋根材にはトタンを採用した。
地震で崩壊した家屋。ヒビが入ってしまったので、余震で崩れる可能性があって危険。 受益者登録の様子。配布当日の混乱を避けるため、配布対象者を事前に選定する。高齢者世帯や寡婦世帯など社会的弱者層を優先登録。
パキスタン・バロチスタン州地震被災地  緊急支援シェルターの資材 緊急支援シェルターの資材
被災した村の人々。地震による地滑りの影響で、来年は農業収入が激減すると予想され、人々は不安な面持ち。 シェルター資材(竹材、トタン、プラスチックシート、鋸・金槌等の道具セット等から構成)の配布の様子。 同左
緊急支援シェルターの建設 完成したシェルター  
現地の生活様式と気候に即したシェルターを提供することはとても重要。人々が少しでも暖かく過ごせるよう、国連からの助言を受けて、砂袋を家屋の壁の内側に積み上げるなど工夫した。 完成したシェルター。冬季の間、家族が過ごすには十分な広さ。これらのシェルター資材は、今後家を再建する際に建材としても役立つ。  


プロジェクト担当者メモ

バロチスタン州は、インダス川以西の低開発地帯に位置し、従来からの貧困問題に加えて、2007年の大洪水、そしてこの度の2009年の大地震と災害に見舞われ続けています。人道危機が立て続けに起こった中、国連や多くの国際NGOが現地に支援の手を差し伸べましたが、最大の課題は治安でした。バロチスタン州域内では独立運動や民族抗争が現在も続いていて、外国人誘拐事件やテロ事件が頻発していたため、外国人の入域は基本的に禁止されています(州都クエッタを除く)。そのため、本事業はカラチからの遠隔操作で管理しなければならないという難しさがありましたが、ナショナルスタッフ(現地職員)の奮闘によって成果を挙げることができました。 (細井)



期間/2009年2月〜2011年4月
地域/パキスタン・バロチスタン州ピシン県地震被災地
予算/約2000万円
連携団体/ ジャパン・プラットフォーム